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2009年○月××日、男は町をさ迷っていた。
「はぁ」
なんの前ぶりもなくため息をついて見せた男の名前は城崎明、21才である。
見た目にはそれといった特徴もなく、短い黒い髪はボサボサでまとまりがない。
着ている服も派手な色や模様の物ではない。紺のパーカーをはおり、完全に開けられているファスナーの間からは少し模様の入った白のTシャツがのぞく。加えて下はジーンズと、あまりセンスのない格好だ。
身長は170センチにかろうじて届いてはいるが、気持ちが落ち込んでいるため今は心なしか小さく見える。
高校時代は成績がわるく、運動も苦手、そのうえ、現在は不況の波に飲み込まれている。
冒頭に「さまよっている」と述べたように無職なのだ。
「あーぁ、なんかいいバイトないかなぁ」
かれこれ無職生活も3年目に突入した。高卒の時点で就職できなかったきり今もなお記録を更新している。
そんな明がいつも通り賑やかな町を歩いていると、不吉な文字をみつける。
「勇者募集中……?なんだこれ」
それは掲示板の端にポツリとはりつけてあった。
~勇者募集中~
任務クリア一回につき
500円~
勤務時間:随時変動
「500って……、やすっ」
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