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「祐介、私ね、俊平と結婚するよ。」
祐介はゆっくり頷いた。
それはもうわかっていた事だった。
「祐介、愛してるよ・・・」
香織はそう言うと、涙を流した。
「おい、こらこら俊平と結婚するのに、なんだその発言は。」
祐介も笑いながら泣いている。
長く辛い恋が終わりを告げた。
さよなら、俺の恋。
さよなら、香織。
「幸せになれよ。約束だろ。」
祐介はそう言うと、香織の肩にそっと手を回し、
「帰ろう、みんな待ってるよ。」
そう言うと、元の場所へ戻っていく。
この触れ合いが最後になる。
祐介も、香織も知っている。
これが若い二人なら無茶もできただろう。
でも、もうお互い大人だ。
香織が結婚をやめてまで、祐介を選ぶわけがないと、最初から知っていた。
だから、はじめから終わる事はわかっていた。
でも、なぜか涙が出てきた。
「香織、愛してる・・・」
祐介がそう言うと、香織が祐介の胸に顔を埋めた。
「香織・・・」
「祐介・・・」
お互いに泣き出した。
戻るはずだったのに、二人は戻る事もできず、その場で抱きしめあった。
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