それぞれの道

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それぞれの道

二人は、しばらく抱き合った。 「もう戻らないと・・・」 「祐介、ごめんね。」 「なんで、香織が謝るんだよ。」 「だって・・・」 祐介は、香織の頭を撫でた。 「俊平と幸せになれよ。」 祐介は、香織に微笑んだ。 「うん・・・」 香織はあふれ出す涙をぬぐった。 香織は祐介を愛しているが、今日まで香織を支えてくれたのは、祐介でもない。 そう、俊平だった。 香織が俊平を選ぶ事は自然の事だ。 二人は元来た道を戻っていく。 これは二人の最後のツーショットだった。 お店に戻ると、俊平が心配そうにそわそわしていた。 香織は、俊平を見てほっとした。 私はこの人と生きて行くんだ。 祐介を忘れるための長い道のりは、今日本当の意味で終わったのだ。 これから祐介は香織と同じ苦しみを味わうかも知れない。 それでも、時という薬がきっと祐介を癒してくれる。 誰かに愛される事で、きっと祐介も香織を忘れていくだろう。 現実はドラマや、映画のようなハッピーエンドを描かない。 それでも、それぞれのハッピーエンドに向かって歩んでいけば、きっと幸せが待っている。 香織は俊平にかけよった。 「お待たせ。」香織の泣いた顔を見て、俊平は涙を拭いてあげた。 「おかえり。」 俊平は微笑んだ。 これから二人の恋がはじまる。 祐介に忘れ去られた日から、失った幸せを、今、見つけに行こう。 別々の道でも、きっと見つけられるはず。      -完ー
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