爆発殺人鬼ごっこ

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「ん?」 大我は休憩場の椅子の下に、ナイフが落ちているのを見つける。 「ナイフ!?」 過敏に反応したのは見付けた本人ではなく言葉を聞いただけの聖。反射的な言葉と共に跳ねるように身体が動いた。 「アイツは言ってたよな……武器は至る所にある……もしかしたら今日、出社してから今に至るまでに、武器の存在に気付いていた奴も居たんじゃねぇか?」 取り出したナイフを、付随していたホルダーにしまってふと大我は口にした。 「え、まさかそんなことあるはずが……いや、え、嘘だ。だとしたら……」 そんな人間普通はいるはずはない、とこれが普通の会社であれば誰しもが即座に断言できたであろう。度々モニタリングと称した実験を行う者もいれば、人間に行うのを躊躇うような企画を平気で通そうとする人間も事実存在している。二人はそれ以上考えるのを止め、とにかく移動することにした。 大人二人に対し護身用ナイフが一本。これでは余りにも心許ない。 武器の存在に気付いたのにも関わらず騒ぎ立てない人間。それが居るかどうかは分からない。しかし居ないとも言い切れない。複数とも限らないし単独とも限らない。 いずれにせよ、ただひとつ言えること。もし居るとするのなら、その人物は紛れもなく、危険人物。 後手に回ればその先は想像がつく。まさかとは思うが考えたくないことも想定して備えなければならない。ついさっきまでの同僚が、本当に誰かを、ましてや自分達を襲うことなどあるのだろうか。そんなことは普通に考えればあり得ない。皆、この馬鹿げたゲームに反抗するはずだ。否、本当に? 分からない。分からない。特に聖は数字付き。二人の心中は不安で溢れていた。
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