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残っていた人々は次々に会議室から逃げて行った。しかし当然、足がすくんで動けない人間もいる。彼女はそんな人間の中の一人であった。
「あぁぁ……あ……なんでも……なんでもします……助けて……助けて」
女性は精一杯懇願する。女性もその台詞の意味は分かっているつもりだった。しかし、このままこんな残酷な方法で殺されるくらいならと、女性はその方法を選んだ。
その意図を汲んだ直哉は、わざとらしく意味ありげにニヤついた。
「じゃあそうだな、目をつぶって。ナメろ。俺の、この……」
みなまで言わずとも分かっていた。恥じらいなど一時、死は永遠の物なのだから。
「……はい……」
女性の顔は目をつぶりながらもどこか強張っている。直哉は目をつぶる女性の前でわざとらしく聞こえるように、カチャカチャとベルトの音を鳴らした。
「恥じらい知らずは命知らずって知らねえの?」
直哉は嗤った。カチャカチャとドリルを鳴らし、歯医者のソレとは似ても似つかない程に乱暴な勢いを以って、女性の口にドリルを突き刺し
回した。
出血多量。窒息。脳部損傷。死因は分からないが、確かに死んだ。殆どの歯が砕け、舌は飛び散った。彼女に尊厳など残されていなかった。女性として、綺麗に死ぬことすら叶わなかったのだ。彼女は、恥じらいと矜恃と命とを、この一瞬の間に全てを失ってしまったのである。
直哉が時計を見るとプリミングNo.9。
「おー、どっちかが2だったんだな」
そして血みどろの会議室を後にしていった。
午後1時15分
残り人数
57人
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