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「僕達も……な、なにか武器を」
小吾朗は縮こまりながらも手探りで辺りを物色する。自分の立てた物音に逐一驚き続けるその姿はまさしく、小という名前がぴったりと当てはまる小心者そのものである。
「熱田君、僕も手伝うよ」
銀縁が光る眼鏡の下にはつり上がった目。不器用に頭をあちこちに向けて武器を探す小吾朗とは異なりその目をせわしなく動かしている。小吾朗の同期である秀昭もそのようにして辺りを物色し始めた。
白衣やパソコン、薬品が似合いそうないかにもインテリ然とした男性である。
「俺は見張りをやる」
残る二人よりも一年前に入社した先輩社員である一真は、神経をギリギリまで研ぎ澄ませながらエレベーターや階段付近のドアを注視していた。
(さてさて、何か護身用に良い武器はっと。ん? こ、これは!?)
秀昭は何かを見付ける。しかし一切の声も出さず手に入れたものをそのまま密かにポケットへとしまい込んでしまった。
「と、取り敢えず護身用の包丁を」
そんなことも露知らず、小吾朗は秀昭と一真に、自らが見付けた果物ナイフと中華包丁をそれぞれ手渡した。
その時、突然、三人の耳にエレベーターの開く音が鳴り響いた。三人の緊張感は一瞬にして最大レベルまで駆け上がる。
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