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午前11時 大手で忙しいものの、他の会社と比べて比較的ゆとりを持った食事をすることが出来るのがここのオフィスの特徴。この時間帯ともなると多くの社員が昼食前最後のスパートに入り出す。 そんな中、再び商品が届く。それは人数分の腕時計。 先程の薬の形をした、正確に言えば小型装置、と連動することで体内に潜む悪性腫瘍などを発見、通知を可能にする索敵機械であると説明された。 従来の医学では早期発見が難しいが身体へと害をなす物。それを見つけると腕時計に対しアラームを鳴らす信号を送るという、簡易人間ドッグがコンセプトとなって開発が進められている商品である。 例えばこれが仮に現段階で製品化した場合、そのカプセルを複数個当時に服用した場合はどのような結果になるか不明である。もしも体内において想定外の場所に進んで行ってしまった場合はどうなるかなど、考えるだけで様々な問題点が挙げられる。 モニターとなる人間がいれば、このような医療製品の開発は目覚ましい速度で進歩することができるため需要はとても高いものの、やはりリスクなどの不安から自らの身体を標本として差し出す人間は少ない。しかしこの会社では自社他社の製品問わずでモニタリングを行うというのも仕事の一環に組み込まれているため、その見返りとして社員は皆破格の待遇を受けることができるのである。しかしある意味一種の汚れ仕事とも言える。 ようするに、腕時計について分かりやすく言うと。先刻の新薬とセットで用いることで、腸内環境に異常があるとカプセルから腕時計に信号が送られる仕組み。 と、そう説明された。 午前11時30分 最初の異変が起きる。 電話線が切れてしまった。 しかしアイデア等を他の会社に売り込む場合、電話は使わずに重要な事は全て直接のミーティングで執り行われる。また、アポを取るための文章等は、何度か確認してきちんとした形にする為にもメールが用いられている。そういった部署の仕事柄電話の需要があまりない為そこまでの痛手とはならず、皆とりわけ騒ぎ立てるという訳でもなかった。 特殊な仕事や環境など様々な要因が手伝うことで、ここエアドラッグのオフィスの常識は一般オフィスと同じように、とはいかないのである。
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