LEVEL

8/17
前へ
/1094ページ
次へ
そして悪魔は発音を学ぶ。 「彼は幸運なモニターです。彼はGAME離脱のチケットを得たのだから」 どよめきはあるが叫び出したり発狂するものはまだ居ない。そう。仕事漬けの大人達を恐怖に突き落とすにはまだ刺激が足りない。 妙なアナウンスに咳と共に軽く飛び散った血液。まだ、それだけである。 そして悪魔は4度目の口を開く。 「このオフィスってなぁーんか変じゃなぁーい?」 口調だけが明らかに変わる。ここで漸く皆々感じとる、異質な奇妙。 「は?」 「え?」 「なんのイタズラです?」 思ったことをを口々にする社員達。酷く不恰好な台詞達。 「普通と違うよね。君達は気付かなかったのかい? ここ社内にある専用電話をプライベートに使い放題だったよね?」 今や普通の口調をマスターした悪魔の囁きに対し 「た……たしかに」 それが当たり前となっていたため、別段なにかを思ったことはなかったが、そう改めて言われれば確かに不思議な制度である。 「それって携帯が圏外だからだよねぇ? 不思議だよねぇ。あ、社内電話は繋がらない様にしたから無駄だよ。君達はもう誰とも連絡は取れないんだ。あ、僕とは話せるね。あはは」 気の抜けた、さながら気さくな大学生、といった様な喋りは、社員達をどよめく者と落ち着く者、ヤジを飛ばす者へと見事に三分したのだった。
/1094ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4098人が本棚に入れています
本棚に追加