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そして悪魔は発音を学ぶ。
「彼は幸運なモニターです。彼はGAME離脱のチケットを得たのだから」
どよめきはあるが叫び出したり発狂するものはまだ居ない。そう。仕事漬けの大人達を恐怖に突き落とすにはまだ刺激が足りない。
妙なアナウンスに咳と共に軽く飛び散った血液。まだ、それだけである。
そして悪魔は4度目の口を開く。
「このオフィスってなぁーんか変じゃなぁーい?」
口調だけが明らかに変わる。ここで漸く皆々感じとる、異質な奇妙。
「は?」
「え?」
「なんのイタズラです?」
思ったことをを口々にする社員達。酷く不恰好な台詞達。
「普通と違うよね。君達は気付かなかったのかい? ここ社内にある専用電話をプライベートに使い放題だったよね?」
今や普通の口調をマスターした悪魔の囁きに対し
「た……たしかに」
それが当たり前となっていたため、別段なにかを思ったことはなかったが、そう改めて言われれば確かに不思議な制度である。
「それって携帯が圏外だからだよねぇ? 不思議だよねぇ。あ、社内電話は繋がらない様にしたから無駄だよ。君達はもう誰とも連絡は取れないんだ。あ、僕とは話せるね。あはは」
気の抜けた、さながら気さくな大学生、といった様な喋りは、社員達をどよめく者と落ち着く者、ヤジを飛ばす者へと見事に三分したのだった。
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