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保健室の先生に一礼するとドアから廊下へ移動して。
ひんやりとした空気の中歩いて。
『結城…』
呼ぶつもりは無かったのについ口から名前が零れた、自分自身でハッとして目を見開くと呼ばれた主は顔だけ振り向かせ。
「何?」
先を促すように見つめられて、何を言おうか言葉を探して。
その間ずっとこちらを見ている結城が気になった。
『えー…と、あの…ありがと。結城が来なかったら…俺…』
どうなってたんだ…?
つか…何をするつもりだったんだろう。
嫌がらせ?
何のための?
急に無口になった俺に慰めるように肩を叩かれた、その感触に現実に戻る。
結城は口元だけ笑みを作ると一度頷き、俺の変わりに口を開く。
「俺は…経験があんだよ、アイツに襲われた経験が。だから光太が危ないと思った」
笑うこともせずはっきりと言った、能天気で人の事なんか考えて無さそうなのに。
ほんとはすごい色々考えて、悩んでそれを見せないように振る舞ってるんじゃないかと思わされる。
それなのに俺ときたら…こんな時になんと言って良いか分からない。
「ま…だから気にすんな、でも気を付けて。光太は素直だし、バカっぽいから。」
途端に明るい笑みを浮かべざっくりと斬られた。
やっぱただの能天気か!
人をバカ呼ばわりしやがって!!
『お前な!バカとか言うな、素直なのは良いことのはずだろ。つーか菓子ばかり食ってるヤツに言われたくない』
ムキになって言い返すと楽しげに笑う結城、しかし菓子の事を言うとハッとしたようにまばたきをして。
「忘れてた、担任に返してもらわないと。ちょ…光太、職員室付き合って」
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