12244人が本棚に入れています
本棚に追加
/576ページ
教室に着くと、面積が狭くなった分、さらに廊下よりも賑やかになっていた。
もうほとんどの生徒が登校しているだろう。
その中で、1人静かに自分だけの世界に入り込んでいる少女を見つけた。
厚さ十センチ近くはあろうかという分厚い本を、机いっぱいに広げて覗き込んでいる。
「おはよう玲那。今日も暑いな」
窓側。一番後ろから1つ前にある俺の席の隣、少女が座る席が太陽の煌めきで眩しく照らし出されている。
静かに顔を上げて俺を見上げると、赤縁メガネに太陽の光が反射して眩しかった。
「……………おはよう」
夏場の窓際はかなり暑かったりする。それなのに、真珠の様な肌は汗粒1つ流していない。
むしろ、メガネの奥に見える澄みきった水色の瞳で、こっちが涼しく感じる程だった。
「何読んでるんだ?」
「…………………」
この無口な少女、相條 玲那(あいじょう れいな)は、知る人ぞ知る超天才少女。IQ200は余裕で超えるであろうその頭脳は、常に知識を必要としているらしい。
何処に行って何をするにも、片手に何かしらの本を持っている。
俺も何冊か本を借りたコトもある。
「相対性理論…。難しい……」
ボソボソと喋る小さな声は、耳を澄まさないとよく聞こえない。
肩まで伸びた青紫のショートヘアーをフルフルと軽く振って、本を閉じる。
最初のコメントを投稿しよう!