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この家に入るのも何年ぶりだろうか。
当時と全く変わっていない。質素な、どこにでもあるような一般家庭のリビングだが、きちんと整理されていて開放感に溢れる。
「好きな所に座っていいよ」
愛華に促され、テキトーにソファーに座る。
向かいの棚には、紅川家の写真が。小さい頃の写真も飾られていて、しっかり俺の映っている写真もあった。
「あ………」
思わず立ち上がって、近寄る。とある写真立ての端に貼ってある、何枚かのプリクラを見つけた。これはまだ記憶に新しい、学園祭の時の思い出。
「いっちー?あ……それ…」
愛華が何事かと覗き込む。愛華もそれを見つけるなり、横から俺を見つめる。
「ちゃんと…持ってたのか……」
「うん…当たり前じゃん…。私の大切な思い出だよ?」
まゆ毛を八の字に垂らして微笑む愛華。
香須美と玲那と愛華と、もう1人の女の子が写るプリクラ。そこに俺の姿はない。
いや、正確には………
「お兄ちゃん♪何見てるのー?天華にも見せて♪」
突然、てんちゃんが覗き込んできた。目を輝かせて、興味深げにプリクラを見つめる。
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