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「一紀、暑い。早く教室…帰ろう」
袖を掴み、玲那の淡々とした言葉が耳に入ってくる。
やはり玲那も人の子。表情は相変わらず無表情だが、額にはジンワリと汗が浮き出ていた。
「稲葉」
ある程度生徒が減ってきたところで、玲那とさっさと教室に帰ろうとすると、名字で俺を呼ぶ声がした。
振り返った瞬間に、ガッと右肩に腕を回してきた。
「な、なんですか蘇安良先輩。」
「いやね、一応挨拶しとこうかと思ってね…」
そう言って意地悪っぽくニヤッと笑う姿はまさに男勝り。
香須美とはまた違う怖さを感じた。
「選抜……期待している」
「……は?」
「は?ってお前、足速いだろ?」
何を言い出すんだこの会長は。そんなコト自分でも確かめたコトはない。中学の時だって選抜に出た訳じゃない。
しかし、自信満々に言う会長に何だか見透かされた気分になった。
「まぁ、そのウチわかるさ。「一紀に…」ん?」
声がした。会長が左を向くと、玲那が会長の服をギュッと掴んでウルウルと目を潤ませていた。
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