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「一紀に…触らないで…」
静かに、しかし、しっかりとした声で会長を見つめる。相変わらず、会長の袖を掴む力は緩まっておらず、シワができていた。
玲那の一言には、個人的にもかなりドキッとした。玲那からそんな言葉が出てくるとは思っていなかったからな。
蘇安良会長は一瞬驚いた様に目を丸くするも、すぐにフッと笑って俺から離れる。
「やっぱり、今年も赤団は強いらしい。……じゃあ、私はもう行くよ。タイム結果、楽しみにしてるからな」
フリフリと片手を振りながら颯爽と体育館を後にする会長の背中を見送ったあと、横目に玲那を見る。
玲那のあの言葉、どういうコトだろうか。いつもは愛華にもそんなストレートなコトは言っていない。
「教室、行こ」
玲那に言葉の意味を聞き出すコトもできず、珍しく引っ張られながら体育館を後にする。
その握られた左手には暑い程の温もりを感じ、まだ少し高鳴る心臓は収まりそうにない。
とある9月の暑い、陽の照り返す朝の出来事であった。
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