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「よーい…!ドンッ!」
先生のかけ声と共に、パンッと大きな音がグラウンドに響いた。
それを合図に、5、6人の生徒が50mの直線を走り抜けるその様を、日影になっている石段に腰かけて眺める。
今は体育の授業中。この時期の昼間の野外授業は厳しいものがある。
ひと度日光の当たる場所に出れば、汗が止めどなく流れて非常に気だるくなるからだ。
が、ずっとこうしている訳にもいかない。
いよいよ先生の合図で、灼熱のグラウンドに向かって重い腰を上げた。
「いっちー!がんばれぇ~!」
言われているこっちが恥ずかしくなる。
愛華の応援が背中に突き刺さるが、振り向いてしまうとクラスの笑いの種になってしまうので、無視してスタートラインに向かう。
「……諒平も一緒か」
順番が来るまでラインの後方で待機していると、スポーツ万能イケメン野郎も来た。
こいつは速いに違いない。多分。
「おや?一紀さんも一緒ですか。楽しみですね」
「俺は楽しみじゃない」
軽く流して一緒に走る奴を見ると、どいつも足の速そうな奴ばかりが揃っていた。
こりゃあれだ。1人だけドンケツになって恥をかくってやつだ。
帰る!今すぐ帰る!!
「何ホントに帰ろうとしてるんですか一紀さん。順番来ましたよ」
「………………」
……どうやらもう逃げれないらしい。最悪なテンションがた落ち状態でラインにつく。
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