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が、しかし、いざスタートラインに立ってみると、ドキドキと心臓が高鳴る。
不思議なもので、走りたくないという気持ちはいつの間にか消えていた。
「よーい……」
先生の声が耳に入り、心臓がキュッと絞まる感じがした。
次の号令に瞬時に反応できるよう、自然と足先と耳に神経が集中する。
その間、走馬灯の様に会長の一言が脳裏をよぎる。
「選抜を期待している」
はっ。そんなバカなコトがある訳ない。
別に運動神経が良い訳でもない。
何かしら結果を残した訳でもない。
ならどうしてそんなコトが言えるのか?
残念ながら、それを考える前にドンの合図が切られて、頭が真っ白になる。この疑問は、今度問いただすしかないようだ。
50mは短いようで長く感じる距離。横の走者等見えず、只々足を動かすコトに集中した。
感じるのは走者の息づかいだけ。まだ前に抜き出た者はいないようだ。
そして気づけば、とっくにゴールラインを過ぎていた。
皆が皆、肩で息をしている。俺も例外ではない。
と、休む間もなく俺はタイムが気になった。というのも、会長に、しかも団長にあれだけ期待されれば、誰だって何とかそれに応えたいと思うのが普通だろう?
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