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「タイムは!?」
ゴールラインに立っていた記録係にすぐ問いかける。多分必死な形相をしていたんだと思う。記録係の生徒はメチャクチャ驚いていた。
「ろ、6.2秒です」
「………………」
それって速いのか?
基準が分からないだけに、自分が速いのかどうかもわからないでいた。
そうだ。諒平がいる。諒平に聞けば……
「一紀さん速いですね……」
「お前、タイムは?」
「6.4です」
「……ウソだろ?」
ゾワッと沸き上がるものを感じた。まさかの0.2秒もの差をつけて、諒平に勝ってしまったのだから。
「ははは。ホントですよ。ビックリしました。一紀さんだけぶっちぎりでしたよ。」
「……………」
諒平と肩を並べて、さっき座っていた石段に向かう。
さっきまであんなに気だるかった暑さなんて何のその。足がプルプルと震えて上手く歩けなかった。
「いっちー速かったねぇ~!」
遠くから見ていたコイツらが一番よくわかっていたんだと思う。
ようやく、ようやく自分のタイムに実感が持てるようになった。
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