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「ふん、まぐれよまぐれ」
香須美が腕と足を組んで、ソッポを向いている。今日の香須美は走りやすいようにする為か、後頭部で髪をまとめたポニーテール。
その爽やかな髪型が体操服とよく合うんだなこれが。
ガラッと印象が変わった香須美に、クラスのほとんどの男子の目も釘付けになっていた。
「…香須美はどうだったんだ?」
「うるさい。今機嫌が悪いの。話しかけないで」
「お前から話しかけたのに「なんか文句あんの?」何もないです」
ギロリと真っ赤な眼光に睨み付けられたので、おもわず肩をすくめる。香須美が再びソッポを向いた瞬間、愛華に
「なんであんな怒ってんだ?」
と、耳打ちをした。
愛華も俺を真似て、両手を耳に当てて耳打ちをする。
「いっちーが自分より速かったから、悔しいんだよ」
なるほど、キングオブ負けず嫌いが本領を発揮しているらしい。
1人、ムスッと負のオーラを放つ香須美には誰も近づこうとしない。
というか、なんで俺が敵に回されているのか甚だ疑問だ。
いや、ある程度は予想がつくか。大方、自分より遅かった俺を蔑み
「はんっ!女の私に負けるなんて、人間の底辺にも程があるわね!この負け犬!」
とでも言いたかったんだろう。俺が見たところ、香須美もかなり速かった。あいつのタイムに負けた奴もいるだろう。
それなら、何人の人間の底辺がこの世に生み出されるコトだろう。
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