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しばらくして全員が走り終わり、集合がかかる。
これで体育の授業は終わり。先生の話が終わると、皆して暑いと言いながら水飲み場に押し寄せた。
「一紀、一紀」
俺も火照った体を冷まそうと顔を洗っていると、玲那が寄り添ってきたのがわかった。いつになく声色が明るいので、思わず顔を上げる。
「一紀…速かった……」
「まだ分からねぇよ。クラスはいっぱいあるんだし、まだ速いやつがいるかもしれない」
「でも……」
何かを期待していたのか、少しションボリと俯く玲那。
思わず頭を撫でていた。
「それに、別に選ばれなくってもな。お前と競技出れるだろ?俺はそれだけでいいよ」
言っててむず痒くなった。
まぁでも本心だし……。恥ずかしくなって視線を横に逃がす。
「うん……でも、一紀なら、大丈夫」
「ちょっ!こんなとこで……!」
再び声色が明るくなったと思うと、抱きついてくる感触があった。こんな大衆の面前で……。
「いっちぃ~…!!」
「一紀……どうしても私を怒らせたいらしいわね……」
何故か怒りの矛先が俺に向かっているのは恒例になっている。
玲那を引き剥がせなかったので、しがみつかせたまま逃げる
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