第二章《茜色の過去》

5/10
前へ
/85ページ
次へ
練習は厳しかった。 肺活量を鍛えるためのジョギング、声だし、筋トレ…… いかにやる気があるメンバーが集まろうと、それは所詮最初の何日か。 幾度となく部員から辞めたいや、疲労の声が聞こえてくる…… だが、茜がいつも笑顔で頑張り、皆を励ます姿を見ると、何故か疲れが取れて…… 天使のように、その自分の幸せを振る舞っていた茜の元を離れる部員は一人もいなかった。 緑は、その茜の姿を見て嬉しいとさえ感じていた。 部活が終わり、茜が言った。 『緑、今日は一緒に帰れるの?』 茜はいつものように、最後まで残り一人で掃除や片付けをしていた。 緑はいつも、親の手伝いが忙しく、茜の手伝いまで手が回る状況ではなかったのだが、たまたま今日は手伝いがなく、茜と一緒に帰る約束をしたのだ。 『ちょっと待ってて! すぐ終わるから』 『あたしも手伝うよ』 二人は、笑顔でうなずいてから片付けに取りかかった。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加