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クリスマス。
赤い服のおじいさんがプレゼントをくれる日。
今までも、サンタというおじいさんは私に12回、プレゼントを持ってきてくれた。
昔、寝たふりして薄目をあけて見張ってた時があった。
深夜の二時を過ぎたころ、カチャリと音を立てて窓から誰か入ってきたのを覚えてる。
それは真っ赤な服に真っ白なヒゲをはやしたちょっぴりふとったおじいさん。
普段なら不法侵入だけど、今日は聖なるクリスマス。
サンタは本当に来た。
私は嬉しかった。
でも、わかってる。
「ねえ。本当にサンタなんているの?」
暖かい暖炉の前に座って本を読んでいたおじいちゃんに聞いてみた。
本当は私だって分かってる。
サンタなんかいないんだって。
サンタは本当は私のおじいちゃんだったり。
大切な人だったり。
みんなの想いだったり。
パパイヤ鈴木だったりするんだ。
おじいちゃんは、目を細めて優しい笑顔でこういった。
「サンタはね? 実はおじいちゃんなんだよ」
やっぱり……。
別に驚かないし、悲しまない。
私も本当の事を教えてもらう年齢になったんだ。
それだけ。
私が「うん。本当は知ってたんだ」って言おうとしたら、おじいちゃんは悲しそうな顔になって、こういった。
「でも、今年からおじいちゃんはサンタになれなくなったんだよ」
サンタに……なれない……?
どういうこと?って私は聞いた。
私に本当の事を言ったからかな。
サンタは本当はいないんだって。
だから、もうサンタとしてプレゼントは届けられないって意味なのかな。
でも、違った。
「わしはもう年寄りすぎるんだ。長い年月、子供達に夢と希望を乗せてプレゼントをくばっていたが、もう限界のようだ」
そういうと、よっこいしょって立ち上がると、杖をついて部屋を出ていってしまった。
そして、おじいちゃんはどこかに消えてしまった。
おじいちゃんが消えたその年。
サンタは現れなかった。
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