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「ねえ、キミはサンタさんのお孫さんだろ?
なら僕の孫も同然さ。
だから助けてくれないか?」
私はいきなり喋るトナカイの孫になった。
「助けてあげる前にいくつか質問があるわ。あんたはなんでそんな流暢に喋るの?」
そんな喋るトナカイと普通に会話している私もどうかと思うけど、ツチノコとかネッシーとかチュパカブラとか、不思議な生き物はたくさんいる。
別に喋るトナカイがいても不思議じゃない。
「僕はサンタさんのトナカイだからさ。ルドルフって言うんだ。
知ってるだろ?」
突き刺さっているのにトナカイはすごく元気だ。
「知ってる。赤ハナのトナカイ、サンタのトナカイね。
で、あんたがそのルドルフだって証拠は?」
物騒な世の中だ。
例えトナカイでも警戒するにこした事はない。
「おいおい。途中までメルヘンチックだったのに、なんでいきなりこんな現実的な会話になるんだ?
そのソリに僕の免許証が張りついてるはずさ」
ソリを見ると、確かに側面に免許証がついている。
名前もルドルフ。間違いはないみたい。
「じゃあルドルフ。あんたはなんでこんなところに突き刺さってるわけ?」
家の屋根に突き刺さるなんて並大抵のドジじゃない。
大事故だ。
「サンタさんがソリを運転してないからさ。
バランスが取れなかったから着陸に失敗したのさ」
つまり車だけが運転手無しで暴走していたようなものだ。
危ないなんてものじゃない。
「じゃあ、警察に届ける前にもう1つ。
サンタさんはどうしたの?」
ここにトナカイがいるならサンタさんもいなければいけないことになる。
そう、サンタさんは本当にいたのだ。
……いや、でも昨日、おじいちゃんは自分がサンタだって……。
「サンタさん?
何言ってるんだい? サンタさんは昨日、消えてしまったじゃないか。……って警察!?」
昨日、サンタさんは消えた……?
でも昨日消えたのは、私の……。
「待って、警察は待って! もうヤバイんだ!
次に捕まったら免許取り消しに……」
もう、ルドルフの言葉はどうでもよかった。
私は急いで窓から家の中に戻った。
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