*Tear-stone ~聖なる夜の涙~*

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おじいちゃんが残した鍵。 本当は、もしかしたらって部屋があった。 おじいちゃんの部屋。 絶対入っちゃいけないって言われてた部屋。 ドアに触れただけで吹雪の中、外に放り出された事もあった。 でも……。 「入っていいって事だよね……」 今まで触れる事の無かったドアノブの鍵穴に金色の鍵を差し込む。 鍵はすんなりと入った。 カチャリと鍵をあけて中に入る。 「赤い服……。これって……」 そこには、真っ赤でモコモコした服に帽子。 大きな袋に真っ赤なブーツ。 それは、サンタさんの服……。 そして、一枚の封筒。 おじいちゃんからだった。 私は震える手で手紙の封を切って、中身を取り出す。 中にはクリスマスカードが一枚。 そこに書かれた文字を読む。 なんども、なんども読み返す。 おじいちゃんが消えた時。 何がなんだかわからなくて、信じられなくて、出なかった涙が自然と溢れてきた。 私は涙を袖で拭って顔を上げて天井に向かって、叫ぶ。 「ルドルフゥゥゥゥゥウウッ!! 自力で脱出して急いで出発の準備っ! 5分でやんないと警察だからねっ!!」 すると、屋根の上から悲鳴と、ガタガタと何かがもがく音が聞こえてきた。 私も準備しないといけない。 ぶかぶかのサンタの服を着込んで。 大きな袋を担いで。 そして、おじいちゃんからのクリスマスプレゼントをポケットにしまう。 今年のおじいちゃんからのプレゼント。 それは、高価なオモチャでも、可愛いぬいぐるみでもない。 それは、〝託された願い〟 『驚かせてしまってすまなかった。 だが、解って欲しい。 もう老体に鞭打ってプレゼント運ぶの疲れた。 あのトナカイ、事故ばかり起こしやがって……。 だからわしはもう辞める。 今年からお前がサンタだ。 わしは箱根辺りでのんびりやっとるよ。 あ、ちなみにプレゼントさぼるとマジで消えるから。 じゃ、メリークリスマス』 箱根ってどこ? まずはそこら一帯にプレゼントばらまいてやる。 そういえばおじいちゃん、漬物石欲しがってたっけ。 さぞかし喜んでくれるよね。 おじいちゃんが消えた年。 サンタさんは現れなかった。 代わりに、漆黒のサンタがプレゼントに紛れて石を落として行ったという……。 ~End~
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