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泣く君を説得もせず、僕は彼女のきれいな長い髪の毛にハサミを入れた。
僕らは双子。
誰にも見分けられない一卵性の双子。
罪な僕は必死になって君を救う。
それは全て僕のため。
僕は君が生きていることこそが幸せなのだから。
僕は君が助かるのならどうなってもいい。だから君だけは生きていて。
そして、どこか遠くの幸せな国で笑っていてよ。
「僕達が入れ代わっても、誰もわかりはしないよ」
僕達は不幸な双子。
生まれてすぐに佐織は姫になり、僕は名前もないまま牢獄へ繋がれた。
双子が生まれた家庭は不幸になる、そういう迷信で引き離された僕らは、それでも月に一度だけ会うことを許された。
戦争で姫の身を守るため、身代わり役に使われたそっくりな僕は牢獄から解放された。
いつ殺されるかわからない。
それでも、僕は佐織の傍にいられて幸せだった。
戦争が終わり、そんな僕らをまた、大人は引き離す。
大嫌いな王国。
くだらない争いを起こして、負けて、人質を渡して安泰を守る。
大人なんて嫌いだ。
僕達を何度も引き離す。
佐織のきれいな髪は地面に落ちて、鏡には同じ顔が二つ。
誰も僕達が入れ代わったなんてわかりはしない。
僕は佐織の服に腕を通す。
佐織は僕の服に腕を通す。
もう永遠に会えない僕達は不幸な双子。
それでも僕は君を守るよ。
君が幸せになることを祈って。
ナイフを持って、上へ上がる。塔のてっぺんを目指して。
その間、佐織は下へ下りていく。
引き離された、そっくりな僕らの運命は真逆でいてほしい。
不幸なら僕が全部引き受けるよ。
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