その天使、憂鬱

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「貴様、やっぱりここでサボっていたか!」 寝ている天使に対し、眉間にしわを寄せて見下ろした。 「アラス」と呼ばれた天使は被っていた本をどけ、体を起こし だるそうに声主の方を向いた。 「やれやれ、大きな声を出さないでくれたまえ」 「アラス、貴様こんなところで何をしている……?」 アラスはやれやれと大げさに呆れたポーズを取り、軽く溜息をつく。 「おやおや、キミの目は狂ってしまったのかね、クロノス?」 アラスは目の前にいる天使をクロノスと呼んだ。 「私は見ての通り、ここで一眠りしてるだけさ」 「それが問題なんだ! 任務を果たしたら神へ報告するのが常識だろ!」 「全く報告くらい下級の天使にさせればいいではないか」 天使には階級というものがある 一番が神、次に上級天使、その次に中級天使、下級天使、見習い天使という階級となる。 ここにいるアラスとクロノスは上級天使である。 上級天使は天使の中で、わずか数人程しかなれない少数精鋭の実力者。 下位ランクの階級の天使からは尊敬されし存在。 上級天使は彼ら天使の見本となる存在にならなければならないが、ここにいるアラスは…… 「ふぁ……全くいちいちそんなことで起こさないでほしいものだねぇ」 上級天使らしからぬ、クセのある天使だった。    
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