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翌日の朝。
宮殿の近くに上級天使のみが住むことを許される屋敷がある。
その屋敷は人間界でいうところの貴族が住むような豪邸だった
屋敷のとある部屋。
一人で住むにしてはあまりに広すぎるこの部屋に、アラスは窓の近くにある椅子に腰をかけていた。
アラスは腕を組み、足を組んで外の景色を眺めていた。
「クク……ククク……」
何かを思い出し、ニヤリと笑う
先ほどからアラスはずっとこの様子だった。
笑いが止まらない。
その理由は簡単だ。
彼は、アラスは今とても気分が良い。
ある事を思い出すたび、心が震え上がる。
こんな感覚を味わったのは……
初めてだ。
もう一度あの時の光景を思い返していると、小さくドアを叩く音が聴こえる。
アラスは目線を外の景色から部屋のドアへと移す。
「誰かね?」
「……あ、あの、ソフィアです」
ドアの向こうからソフィアの声が返ってくる。
「入りたまえ」
「失礼します……」
ソフィアはおずおずと中の様子を窺(うかが)うようにドアを開けて、部屋の中に入るがドアの前に立ったまま、動かなかった
「アラスさん……その……」
彼女の表情を見なくても、声でソフィアが不安な気持ちを抱えているのが分かる。
不安、というより……
彼女は何かを心配している、といった表情だった。
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