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駆け寄ってきたその女性に、
「おぉ昴、今日は俺の取引先の人連れて来てん!」
と答える大倉さん。
大倉さんの方を見ているためによく顔が見えないが、長い髪からチラッと覗く顔立ちは確実に美しい。
2人で楽しく話しているかと思えば、その昴と呼ばれる女性がふとこちらを見る。
名前ぐらい教えなアカンよな…
そう思い、
「あ…えと、安田です…」
と、ぎこちなく自己紹介。
「昴です、どうぞよろしく」
そのぎこちない言葉に対してサラリとそう自己紹介する昴さん。
周りをキョロキョロ見回してみるけど、なんか俺だけ浮いてる気がする。
みんなこの場に慣れてる感じやし…。
そんな不安と恥ずかしさから、肩をすぼめた。
そうして縮こまった俺の姿を見た大倉さんは、
「安田さん、そんなに緊張せんと!ここは楽しくお酒を呑むとこなんやから!」
と肩をバシバシ叩きながら笑う。
ちょっと痛いし、そんなこと言われてもなあ…。
「そうですよ?安田さん、どうぞ気楽に楽しんで下さい」
チラッと昴さんの方を見ると、目を見てにっこり笑いながらそう言われる。
その意思の強そうな綺麗な瞳に見つめられて思わずドキドキしてしまい、自分でも顔が熱くなるのが分かった。
「あ…はい……/」
照れ臭いながらにも必死に返事。
不思議なことに、少しだけ…さっきより緊張が解けた気がする。
その後俺には別のホステスがつき、色々と話をした。
しかしどうしても目が昴さんの方にいってしまう。
少し声がハスキーなのも魅力的やなあ、なんて思いながら、大倉さんとのやり取りを密かに眺めていた。
少しすると、俺についていたホステスはオーナーに呼ばれて俺は1人になった。
1人でいるのもアレやし、大倉さんと昴さんの元へ行こうとしていた時に
「はは、ごめんごめん。だって昴可愛いし?アフター来てくれへんしー?」
という会話が耳にはいる。
てゆうか、
「アフター…?」って何やろ?
不思議そうな顔の俺に、大倉さんは
「アフター言うてお持ち帰りがあるんやけどさ、昴は絶対してくれへんねんー。ま、アフターする事自体あんま無いけどな」
と説明してくれた。
お持ち帰りってことは…その…そういうことするってことやんな…?/
別に自分がその行為に及ぶ訳ではないのに何故か無性に恥ずかしくて、
その後あまり言葉を発することがないままキャバクラを出ることになった。
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