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外では桜が花を咲かせているころだろうか。少年は一人、苦闘していたにも関わらず、そんなとりとめのない事を思う。
ああ、これ、どうなんだろ。真っ赤な血がどびゃって出たりするんだろうか。桜への思いと同時に想像することとは違う気もするが、実際思っていたものは仕方ない。
そんな悟りを開かざるを得ない状況に、少年は嘆いていた。
勝手な少年の妄想に訂正を加えるとするならば、これは血が出るとか出ないとかの問題じゃないだろう。
「いや、死ぬって。木っ端微塵とか嫌な死に方だな……」
余裕は無い。
もはや希望も無い。
「泣きっ面に蜂とはよく言ったもんだ」
どうしようもない人間は此処まで冷静になれるものなのか。
それはその状況にならないと分からない。だから分かりたいとは思わない。
しかしこれは蜂にしては随分とでかい。
蜂イコール目の前に迫る断崖絶壁。それに向かって進み続ける電車という名の大きな箱。
そんな中にいる小さな少年。
先端に取り付けられたライトが暗い線路を照らしていた。しかしその線路ももう少し先には見受けられない。
明かりが届かないというわけじゃなくて、存在が無い。
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