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「ここの餡蜜はおいしいですねぇ、土方さん」
「バカ、餡蜜なんざ大したこたぁねぇ」
男の聞き捨てならない発言に店の者が一斉にじろりと男を睨む。
「ここは饅頭がうめぇんだ」
慌てて付け足すように言った男に、中性的な顔立ちの青年はケラケラと笑った。
「私は餡蜜も饅頭も好きだなぁ。大福も美味しいですよ。紅葉屋のに比べたら月と犬のクソの差があるけど」
「…………………」
土方、と呼ばれた男はそろりとせわしなく働く店の者を横目で見た。
気丈そうな一人と目が合うが、ニコリとされただけだった。
「なんで総司だけそうなる………」
「私は常連様ですよ?それに客の声を聞くのも店の仕事です」
屈託のない笑顔で言ってのけた青年――――沖田総司に、土方はしらっとした目を向けた。
知らん顔で、否、本当に気にも止めない様子で、沖田は嬉しそうに餡蜜を口に運んでいる。
「――――謝らんかいコラァ!!!」
突然、ドスのきいた男の声が通りに響いた。
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