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「なんですかねぇ」
間延びしたような沖田の声には答えず、土方は茶を一気に飲み干した。
「………なんでもいいが京の治安を乱すような真似はさせねぇ、だろ?行くぞ」
土方と沖田は勘定を払うと、騒ぎのほうへゆったりと歩き出した。
「………土方さん、もう少し急ぎません?」
「いや、饅頭の餡が甘ったるくて気分悪くなってきた。総司、俺ぁそこで休んでるからお前様子見てこい」
言いながらも土方は既に先ほどの店の二つ隣の甘味処の、通りに面した長椅子に腰を下ろしている。
沖田はあきれた。
「だらしないなぁー。スッキリ全部出させてあげましょうか?」
「……おい、なんだその握り拳は?さっさと行ってこい!!」
横暴だ、ひどい、と沖田が口を尖らせて踵を返そうとしたとき、
「―――壬生狼ごときが兄貴をなめんなよ!!!」
先ほどの男とは違う男の喚き声に、沖田は土方を振り向いた。
切れ長の目が面倒臭そうに声のするほうを見ている。
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