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2日間の陣痛で弱った体を引きずり、陣痛室へ…
すると、分娩室から異様な声が漏れてきた。
ワァーウッ、ウォーウッ!
ギャーッ、グワーッ!
断末魔の悲鳴がこだまする。
これからのことを思い恐怖のどん底にたたき落とされたワタシだったが、あとで思うに、ブラジルの方が出産していたらしい。
(あちらの方は声を張り上げるらしい。)
別室からは、陣痛の痛みに耐える女の方の声。
だんなさんもいた。ヒッヒッフォ〰ヒッヒッフゥゥと語尾だけ異常に声が高いラマーズ法の夫婦。
これには痛さの中でもニヤリとしてしまった。
陣痛がくるたび、あたたたたたた、と叫び、あれだけ練習した呼吸法もどこかにいってしまったが、なんとか意識は保てた。
医者が来て、なんどかいきむが、なかなかでてこない。痛さが限界に来て、皮膚を切られていても分からないほどだった。
赤ちゃんの心音が下がり、ヤバイ、と感じた医者は奥さん(医者)をよび、二人がかりでお腹を押す。
それでもでてこない。
少し見えていた赤ちゃんの頭を器具で引っ張る。
「ぶちぶちぶちっ!」
皮膚が裂ける音とともに、…産まれた。
血だらけの赤ちゃん。
お腹の上に乗せられ、おっぱいを吸った。
感動で、涙が出た。
出てきたばかりなのに、頭から飲み込みたいくらい、かわいかった。
二十針以上も裂けた股を縫いながら、医者は、「あー、こりゃぐちゃぐちゃだ。切った上に、裂けちゃったよ。きれいに縫わんといかんなあ。」
とポツリ…
後で考えると恐ろしい発言だが、とにかくそのときは感動でいっぱいだったので、スルーした。
600CCも出血したらしく、そのあと部屋へ帰るのもやっとだった。
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