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こんなの――男らしくない。
僕は慌ててぶんぶんと首を横に大きく振ってやましい思考を消し去り、視線をルールブックへと戻すがその内容はちっとも頭に入らなかった。
いや、落ち着け、冷静になるんだ小山内幸輔(こうすけ)。この沈黙は気まずいがチャンスだ、いきなり告白されたら考える時間がないが、今の状況はこの時間に考えることが出来る!
「考えさせてくれ」なんて男らしくないことを言いたくはない。クールになって今から答えを考えておくんだ。僕は、月之瀬さんのことをどう思っているのか。
…………。
「あ、あの、小山内くん!」
少し上擦った月之瀬さんの声が僕の耳に向かって重い空気を切り裂くように勢いよく飛んできた。
相手は覚悟を決めたぞ。僕も決めろ。
「な、なにかな?」
静かに深呼吸をして気持ちを落ち着けた――つもりだったが顔をあげて月之瀬さんの顔を見ながら発した僕の声は裏返ってしまっていた。
「もし、良かったら……私と付き合ってくれませんかっ!?」
さっきまで紅潮していた程度だった月の瀬さんの顔は耳まで真っ赤に染まっていて、彼女の緊張の度合いを表しているようだった。
はっきり言って月之瀬さんは可愛い。その上、こんな勇気を振り絞っての告白をされて嬉しくない男など居ないだろう。
「ありがとう。気持ちは嬉しいよ……でも、ごめんなさい」
でも、勇気を振り絞ってくれたからこそ、いい加減な気持ちで付き合ってしまっては月之瀬さんに失礼というものだ。
「ああ、やっぱり、そうですか……」
僕の返答を聞いて月之瀬さんはもの悲しそうに表情を歪める。諦めたような、しかしショックの色を隠しきれない――そんな表情を作る。
「『あの噂』は、本当、だったんですね……」
そして、なにやら激しく気になる単語を呟いた。
「あの、月之瀬さん……その『噂』っていうのはどんな噂?」
正直嫌な予感もするし、冷静に考えて今月之瀬さんに聞くべきことではなかったかもしれない。
でもその嫌な予感に突き動かされて、考える前に口が動いてしまっていた。気になるもの。『あの噂』って何さ……?
月之瀬さんは涙を拭うと僕の質問に答えるためにうつむかせていた顔を上げて、答えてくれた。
「小山内くんが、幼児体型の少女にしか興味ないロリコンだって、そういう噂です」
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