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*3*
優のバイト先は有名な料理屋だった。
優はバイトの身だけど、
立場的には副料理長で、数々の料理をその手で生み出していた。
そんな優は、
イブの夜は大忙しだった。
昼間は休みだったけれど、夜は予約で満席に埋まった客の料理を作ることに精を出していた。
杏奈とは夕方5時頃に別れた。
ケーキを渡すと、
『皆と食べるね!ありがとう』と言って笑顔で帰って行った杏奈だけど、優にはどこか寂しげに見えた。
ラストオーダーも終わり、
ロッカーで着替え、優は店を出ようとしていた。
「あ、ナカちゃん待って!」
2つ年上のバイトの松井志保が、優を呼び止めた。
「あ、志保さん。お疲れさまです」
「お疲れ!ね、ナカちゃん。杏奈ちゃんは何してるの?」
志保は優と杏奈の交際を知っていた。
それどころか、ちゃっかり志保と杏奈は仲が良かったりもする。
「家で家族といますよ」
「へぇー。ねぇねぇナカちゃん」
「はい?」
「ナカちゃんさぁ、ちゃんと杏奈ちゃんに愛情表現してる?」
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