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部屋の前までくると、
優は大きく深呼吸した。
胸に手を当てると、マラソンした直後くらいに心臓がバクバクいっていた。
「鈴本ー、俺」
優は部屋のドアをノックした。
けれど何も返事はなく、恐る恐る優はドアを開けた。
すると、杏奈はベッドで眠っていた。
少し力が抜けてしまった優だけれど、その寝顔はとても愛らしくて、いつまでも見ていたいと思うほどだった。
優は杏奈の髪を撫でた。
サラサラしてて、とても鮮やかで綺麗な栗色の髪。
杏奈は寝ていた。
それでも優はドキドキした。
それでも優は恥ずかしかった。
「大好きだよ……杏奈」
「……ケヘヘ」
急に笑い出した杏奈に、優の心臓は弾けた。まさか……まさか……。
「私も大好きだよ」
「うっわうわうわうわ!!」
杏奈は目を開けて、
ハッキリ言い放った。
杏奈は起きていた。
ただの狸寝入りだったのだ。
杏奈の狸寝入りの訳は、
本当になんとなくで、特に意味はなかったのだけど。
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