クリスマスの恋人達

14/16
前へ
/16ページ
次へ
部屋の前までくると、 優は大きく深呼吸した。 胸に手を当てると、マラソンした直後くらいに心臓がバクバクいっていた。 「鈴本ー、俺」 優は部屋のドアをノックした。 けれど何も返事はなく、恐る恐る優はドアを開けた。 すると、杏奈はベッドで眠っていた。 少し力が抜けてしまった優だけれど、その寝顔はとても愛らしくて、いつまでも見ていたいと思うほどだった。 優は杏奈の髪を撫でた。 サラサラしてて、とても鮮やかで綺麗な栗色の髪。 杏奈は寝ていた。 それでも優はドキドキした。 それでも優は恥ずかしかった。 「大好きだよ……杏奈」 「……ケヘヘ」 急に笑い出した杏奈に、優の心臓は弾けた。まさか……まさか……。 「私も大好きだよ」 「うっわうわうわうわ!!」 杏奈は目を開けて、 ハッキリ言い放った。 杏奈は起きていた。 ただの狸寝入りだったのだ。 杏奈の狸寝入りの訳は、 本当になんとなくで、特に意味はなかったのだけど。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2523人が本棚に入れています
本棚に追加