私の還る場所

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「そういえばさあ」 と郁子は卵焼きを食べながら言った。 「今年は打ち上げに行くの?」 私たちの学年は毎回学園祭や球技大会が終わると、地元のログハウスを借りてキャンプもどきをするのが主流だった。お菓子や焼肉やジュースで盛り上がる。一度だけ参加したけど、私はなんだか馴染めなかった。去年の学園祭のあとは、体調を崩して寝込んでいた。郁子も理由を聞かなかったけど、行かなかったらしい。  私は昔から誰かと同じというのは嫌いだったから、教室で馴染むことは少なかった━━だからといっていじめを行なうような陰湿なクラスでは毛頭なかった━━、つまりあまり社交的な人間ではなかった。だからよく担任に呼び出されては、なにか悩みがあるのかと中学時代は心配されていたほどだ。私はクラスに不満を持っていなかったし、クラスのやることにいちいち目くじらを立てて意見を述べるような問題児ではなかった。 「まだ決めてないよ」 そう言ってお茶を飲んだ。私はいつもとろいのかやる気がないのか、実感というものがもてなくて、終わってしまってからある疲労感や充実感でやっと実感を持つという人間だった。そんなわけで、もちろん盛り上がっている人間にはついていけない。だけど、端っこでぽつんとクラスメイトの楽しい話に耳を傾けることは好きだった。  学園祭はいつも怒涛のように終わる━━人数の少ないうちの学校はそもそもやることが多すぎるのはないかといつも重ねられた食器を洗ったり、疲れた身体でバンドの曲を聴きながら出し物もほとんど見れないことに後悔している。漫画の中のようにゆっくりしたりラブロマンスが私にはないのも要因の中にあるかもしれないけれど━━。
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