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結局私は打ち上げに参加せず、郁子と遊んで代休を費やした。私たちは時々互いの家でパジャマパーティーをする。寒いから布団にくるまってお菓子を食べながらいろんな話をする。漫画を読んだり、音楽を聴いたり、いつも一緒にいて、話してるのに話すことは尽きない。
「ねぇ、玲子は将来やっぱり小説家になりたいの?」
お菓子を食べながら、郁子は普通に聞いた。
私は言葉に困った。
「なれたらね……でも親は文学部に行くなら学費は出さないって言うしさ~。フリーターしていつ芽が出るかを待てるほど強くもないんだよね。
郁子はそういえば将来のことはもう決めてんの?」
そのときに、私は彼女の夢を聞いたことがなかったことに気づいた。
「うーん、やっぱりさぁ、ここへきてすごい思ったんだけど、農業したいんよね」
結んでいない彼女の長い髪の毛が布団に落ちる。たいていのクラスメイトの家は農家で、みんな大なり小なり手伝いをしていた。私の家も例外にもれることなく農家で、私は農業があまり好きではなかった。郁子から聞く都会の生活やテレビの中のライトを浴びている人々に憧れた━━才能があり、認められた人たちに━━。
「そっか~、でも農業はしんどいよ? 今から厳しくなるし」
現実は若い私たちには優しくなかった。政治家の話を聞くと、正直うんざりした。
「うん、大変なのはわかっとる。でも、やってみたいんよ。そういう部分では玲子の夢と一緒かもね」
そう言って郁子は笑った。時計は深夜から明け方に変わろうとしている。
「夢に向かってお互い頑張ろうね」
そういって笑った郁子の言葉に私は力強くうなづいた。
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