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2月、年末に大雪が都会を悩ませたのをすっかり忘れて春物が出回りだした頃、地元ではまだ雪が1m近く残っていて、結婚式は延期になるんじゃないかと心配されていた大安の日、郁子は苗字を変えずに結婚した。その日の郁子は最高に綺麗だった。旦那さんになる人は郁子を最高に愛してくれそうな優しくていい人だった。本当に内輪だけの小さな結婚式だったけれど、なんだかすごくいい結婚式だった。スピーチを任されていた私は、教授の手伝いもあってなんとか成功させることができた。
「2人で両親のようにいい家庭をつくっていきたいと思います」
その言葉が私を少しだけ元気にしたのは、やっぱり郁子が最高に幸せだからだと思った。
そして私は季節がほとんど変わらない都会に戻って就職した。慣れない仕事、慣れない人間関係、仕事は楽しかったがどこかやはり自分に満足できなかった。眠れない夜が続いたり、体重が大きく変化することがあった。新しい恋にはなかなか出会わず、カレンダーはいつの間にか1回りしていた。体調の変動を見兼ねた大学時代の数少ない友人のすすめでカウンセリングに通いだしたが、仕事の忙しさもあって行かなくなった。カウンセリングは、学生時代の教師を思い出して嫌だったのもあった。
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