傷痕

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「ところで、君、一体何を言ったんだい?」 しばらくして、僕が言ったら、樹ははじめ、何のことだかわからないようだった。 「ん? ああ、あの人に、ですか?」 ちょっと考えて、やっと言った。 「うん」 あのふてぶてしい山岸が、青ざめて出ていくくらいだから、余程のことがあったんじゃなかろうか? 「それは…」 「それは?」 しばらく間を置いて、樹はにやりと笑う。 そして、言った。 「トップ・シークレットです」 「え~」 ちょっと期待していたから、すごくがっかりした。 「世の中には、知らない方がいい事もあるんですよ」 樹は僕の顔を見て、楽しそうに笑った。 それを見て、樹だけは敵に回しちゃいけないと密かに思ったのだった。 終
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