傷痕

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「そうだったんだ…」 そんなに凄い生い立ちだったのか…。 単さん、大変だったんだろうな。 養子なんて、想像もつかない。 でも、樹だって大変だったんだろうな。 フランスにいながら日本語も英語も覚えて、礼儀作法まで…。 これだけ礼儀正しくて、立ち居振舞いも完璧なんだから、厳しく育てられたのかもしれない。 「樹…大変だったね。辛い事、沢山あったよな」 思わず言ってしまった僕に、樹は笑顔を向けた。 「お互い様でしょう。…それに、僕にはあなたがいましたから」 そんな風に思ってもらえるような事、したのかな…。 10年前…。 僕が覚えているのは、バイオリンケースを抱えた、青い目の男の子に会った事と、その子がアルベールと名乗った事だけ。 会った時に何があったのかは覚えていない。 「僕、そんなに凄い事したのかな…。ごめん、覚えてなくて」 「覚えていないのも無理はありません。まだお互い幼かったですから。あの時あなたは、目の色の事でいじめられて、泣いていた僕に言ったのですよ。『目の色が違ったって、同じ人間なんだから関係ない』って。それから、『友達がいないなら僕がなるから、一人で泣かないで』って。僕は、あなたの言葉にどれだけ救われたか」
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