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「巴、大丈夫ですか? 一人で眠れますか?」
帰り際に樹が言った。
「大丈夫だよ」
そう言って笑って見せたけど、本当はまだ怖かった。
「そうだ巴、あまり効き目はないかもしれませんが、これを持って行って下さい」
樹がポケットから出したのは、銀色の懐中時計だった。
「僕がいつでも側にいますから。それを僕だと思って下さい」
懐中時計には、まだ樹の体温が残っていて温かかった。
「ありがとう…」
「巴…?」
樹が涙を拭ってくれたから、それで僕は泣いてるんだと気が付いた。
「ごめん…嬉しくて」
袖口で涙を拭いていたら、樹は僕を抱き締めてくれた。
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