傷痕

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樹が眠っている間に、携帯を見ると、母親からメールが来ていた。 「夏休みは帰って来ないの? 哲君が出ていっちゃって寂しいから、帰って来てね」 え? 「出ていったって、どういう事?」 そう返事を送った。 その後返って来たメールによると、うちに人が来て、その人が山岸に何か言ったら、山岸は青ざめて出ていったのだという。 うちに来たという人は、背が高くて、髪が黒くて、目の青い、綺麗な顔立ちの青年だったそうな…。 もしかして…。 樹? 山岸がいたら、僕は家に帰れないから…。 僕が家に帰れるように…? たった半日で? 樹…。 君ってヤツは…。 僕なんかの為に…。 何だか泣けてきた。 「巴…? どうしました?」 僕の涙が頬に落ちたから、樹が目を開けた。 「ありがとう、樹」 「ん?」 「今日、僕の家に行っただろ」 「ああ、まぁ。すみません。…余計な事をしてしまいましたか?」 樹は申し訳なさそうな顔をした。
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