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樹は何も言わず、僕を部屋に連れて行った。
「まぁ、座って下さい」
僕は言われるままに、樹のベッドに座った。
「何か飲み物を持ってきます」
そう言って部屋を出ていこうとした樹を、僕は無意識に呼び止めていた。
「行かないで…」
「巴…」
樹は僕の隣に座って、いつものように僕の髪を撫でようとした。
その瞬間、僕の身体は硬直していた。
樹はそれを見て、そっと手を引く。
樹はとても悲しそうな顔をしていて…凄く申し訳ない気持ちになった。
「ごめん…」
また、君を傷付けたんだな、僕は…。
「違うんですよ」
僕の思った事に気付いたのか、樹が言った。
「そんな事じゃ傷付いたりしませんよ。あなたが辛そうな事が苦しいんです…」
樹は僕の前に跪いて、僕の目を見た後、ゆっくり僕の両手を握った。
「巴、何があったのかわからないけど、僕はあなたの味方です。ずっと側にいますから…大丈夫です」
まっすぐに僕を見つめる樹に、思わず抱きついた。
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