切望

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 何故、そんな顔をするの?  あんたも僕が怖いの?  もう愛してるとは囁いてはくれないの?  ただ僕は愛されたかっただけなのに…。  ありのままの僕を必要だって大切だって言って欲しかっただけなのに。いつも叶わない夢は僕を痛めつける。  だけど願いは強くなるばかりで、孤独の深さと同じだけの虚しさを連れた。  僕を抱き締めてくれる温かな腕を求める事がそんなに悪い事?  安らげる温もりが欲しいだけ。けれど愛を囁いた同じその口で僕を化け物と怖れる。  自分達と少しでも違うと、怯えから徹底的に拒絶する弱く未熟な人間。  愚かだと思いながら僕は人間を求めてる。愚かで優しい人間を。  手に入れる事が難しいささやかな願いだけを胸に、繰り返す傷。  孤独を埋めてくれるその人を待ち望みながら、砕けそうな心を必死に保って…僕は血に濡れる 。  最期にくれる温もりは、その心のように一瞬で冷えて僕を凍てつかせた。  拒絶の刃は幾度となく突き立てられて、僕をボロボロにしてゆく。  なのに求める事をやめられずにいる。  僕だけを愛してくれる人。  化け物の僕でも…  だけど今度も違った。  今度こそと強く祈り、そして同じ強さで裏切り、僕を罵り残酷に引き裂く。  愛してると何度も言ったのに、手のひらを返したように、僕とのすべてを一瞬で葬る。  醜いものを見るかのような顔で僕を見る彼。  耐えられない。  本当に悪魔なのはどっち? 「……あんたも違ったんだね」  僅かな間でも愛した人を、殺めた数だけ僕の心も死んでいくのに。
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