序文

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僕は24歳の大学生だ。 時は11月で年の瀬が近づいている。 僕は、ハムスターの遊具の様なものに状況的に乗っていて、不毛で滑稽な繰り返しを行っているのかもしれない。 僕のかつての美点は、内在的に回り続けているブレのないタイヤのホイールの様なものだった。一定の回転を速度を変えつつもしていたし、どんなに遅い回転だとしても、ブレのない一定の回り方をしていた。 良い言い方をすれば自分を見失わない。悪い言い方をすれば頑固だ。そして、物事には良い面、悪い面が必ずあり、それを含めて一つの美点になっていたんじゃないかと思う。 しかし、それも回りが悪くなり、上手くいかなくなった。 ストップ。故障。回転に不具合。このままでは事故になる。最悪の事態だ。 そう。現在の僕は緩慢に少しずつ悪い方に向いている。水滴が岩盤に穴を穿ち、致命的な落盤を引き起こす可能性がある様に、自分を失い始めている。 勿論、原因だってあった。脇の甘さから友人であった人物に詐欺まがいの行為を行われ、自分を損ない、周りを損ない、手ひどい心理的なダメージと金銭的なダメージを負ったりした。そして、それが卒業と就職を遅らせ、強固だと思っていた信用がベニヤ様に脆かったと思い知らされた。  その一連の出来事は自分の残りカスを見せつけるまるで巨大な濾過装置の様だった。アクシデントやハプニングは、そういった効果があり、濾過の後には自分の最悪な粉状のざらついたもの、そして、最高の疑いもないものが残る。僕のための義勇軍が残る。 それが救いで、それが僕を地面に留める優しい引力や重石になった。それは何よりも効果があるもので、うらぶれた人間、叩き潰したくなる憎悪、狂いかけた僕の歯車への最善の潤滑油になった。服作用も何かあったら、その人のために何かやらなきゃと言う気持ちだけだ。 けど、24歳の僕は、そんな最善の粘液に埋まりながらもべとつきやヌメリしか感じなかった様だ。うらぶれた人間は間違った形の甘えを持ち、人の優しさが分からない。もしくは、突き刺さってくると言う錯覚を感じてしまう。 けど、僕は脱した。 うらぶれた現在に、イビツでないヒビを空けることが出来た。取り返したとは言わないし、もっと良い現在(いま)があったかもしれない。
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