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「俺は…」
自分の中に芽生えつつある感情にレノは驚いていた。だが、不思議とその感情に対して嫌悪感はわかない。むしろ、その感情は募るばかりで。
「なぁ、クラウド。俺がお前を護りたいって思うのは、変か?」
握っている手とは逆の手でクラウドの頬にそっと触れる。まるで壊れ物を扱うかのように、優しく。
初めて彼を見た時から抱いていた感情を今になって知るなど滑稽だ。伝えたいという思いと、嫌われたくないという思いが胸の中で責めぎあう。
「我ながら女々しいぞ、と」
ため息と同時に言葉を吐き出した。
目の前で寝ている少年はとても小柄だ。決してガタイがいいわけではない。先ほど彼を抱えて走った時に思ったことだったが、とても軽かった。それは驚くほどに。
「兵士……か」
己はタークスで、彼は兵士。どちらも死と隣り合わせの職業だ。今回は大したことがなかったからいいものの、次もそうだとは限らない。
「次が必ずしもあるとは限らないのが、ここでの暮らしだな」
クラウドはまだそれほど危険な任務につくことはないだろう。それに恐らく、彼が本格的に任務につくようになる頃には今起きているウータイの戦争も終結しているはずだ。近々ソルジャーが投入されることになっている。
「確か1st二人と、その一人のお墨付きの2ndだったか」
英雄が出撃するはずだったな。
ちらほらと考えながらも、レノの視線がクラウドから動くことはなかった。
部屋が少しずつ明るくなってきた頃、彼は目を覚ました。
「ここは…」
真っ白な天井、消毒液の臭い。
覚えのあるその場所に記憶がよみがえる。
「医務室………そうか、あの時何かがぶつかって」
レノさんたちに迷惑かけたかも…。
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