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することのない俺は待機中。
任務を言い渡されていないから今が休みではあるものの、好き勝手動けないのは俺の中では休暇ではない。
「会いに行きたいぞ、と」
なぁ、今、お前はどこにいるんだ?
心の中で問い掛けても返ってくることなどない返答。何度繰り返したかわからない押し問答だ。
「そう言えば、イリーナが今朝騒いでたな。今日が七夕……だとか」
七夕と言えば、やはり織姫と彦星の伝説だろう。
天の川に年に一度だけ橋がかかり、会えるという二人。
願いをすれば叶うという日。
「あーあ。もしも願いが叶うっていうなら、俺をアイツに会わせてくれよ、と」
叶うわけのない願いを口に出してしまうところ、結構キテいるのかもしれない。そしてない返答。当たり前だ。
ふて寝しようと決め込み、俺はソファーに寝転んだ。
――――会いたいか?
「!」
突如響いた声に驚いた俺は飛び起きた。二度と聞こえるはずのない声に思わず周りを見渡す。
でも、やはりいるわけはない。
――――アイツに、会いたいか?
再び聞こえてきた時に気付いた。
声は直接、俺の脳内に響いていたことに。
――――返事しろよ、レノ。アイツに、会いたいかどうか。
自然と口元が弧を描くのを感じた。
俺の返事をわかって聞くアイツがおかしかったが、それに答える俺自身もおかしかった。
「当たり前だ。会いたいぞ、と」
――――じゃあ、俺の言う通りに今から動いてくれな。
そして俺は任せることにした。
数年ごしに聞いた、懐かしい友の声に。
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