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それは今からずっと昔、彼がまだ一般兵だった頃のお話し。
毎日の訓練に疲れながらも、自主トレを欠かさずに行っていた彼の帰宅時間はいつも遅かった。
寮のため門限はあるものの、その時間は十一時と比較的遅い時間だったために、いつも多くの者たちが夜の時間を楽しんでいる。
そんな仲間たちの隣を通り過ぎ、彼はトレーニング後にシャワーを浴びただけの体を早くゆっくり湯船に浸けたくて、寮へと向かっていた。水に濡れた金髪はビル内の蛍光灯の光を反射してキラキラと輝いている。
彼の名はクラウド・ストライフ。神羅カンパニーに入社して、まだ三ヶ月の新人兵だ。
クラウドは神羅ビルの、ある一つの出入口へと向かう。出れば寮は目前だ。
温かな湯船を思い、口元が緩く弧を描いた。しかし直後、その口元は引き結ばれる。
「あれは確か………タークス?」
ダークスーツに身を包んだ二人の男が、見張りをするように出入口の両隣に立っていた。赤髪に目の下の刺青が特徴的な男と、スキンヘッドにサングラスが特徴的な男。まだ任務らしい任務もなく、タークスと共に任務をすることなどほとんどないために、その二人が誰なのかはわからなかった。しかし、一般兵である自分が敬意を賞するには当たり前の相手だった。
「お疲れ様です」
立ち止まって二人に敬礼をとる。
「おう、ご苦労さん、と」
赤髪のタークスはそう答えた。
「………」
スキンヘッドのタークスは何も言わなかったが、視線を向けて軽く頷いた。
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