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ため息を吐くクラウドは、左手に温もりがあることに気付いた。
誰かに、握られてる?
視線を向けると、そこには
「レノ、さん…?」
しっかりと手を握り、ベッドに上半身をもたれさせた状態で眠っている。
クラウドの乾いた喉からは擦れた小さな音しか出なかった。
ずっと付いていてくれたのだろう。それを思うと胸が温かくなる。
そっとレノの手を握り返す。
温かくすっぽりと自分の手を包み込む彼の手は大きく安心感があった。見ることの出来る寝顔は得した気分で嬉しく思う。
そして、それとは別に湧き上がる思い。
「レノさん、俺…」
気付いてしまった思いは止められず、涙となって現れる。唇を噛みしめて、クラウドは声を必死にこらえた。それでも涙は止まらずに零れ落ち、真っ白なシーツに染みを作る。
「っく…」
今だけでもこの温もりを感じていたくて、手を握る手に力を込める。時間が経っても、彼の涙は止まらずにいた。
外では太陽が完全に姿を現わしていた。
その時不意に、手が強く握られた。
「クラウド、どうした?傷が痛むのか?」
ハッと視線を向けると、今起きたのだろうレノが心配そうに見つめている。気遣う視線は本物で、クラウドはその気遣いに自分が情けなくて恥ずかしくて、また涙を零した。
「違います…」
頭を振ると弱冠の痛みは走るものの、そんなことは今のクラウドにとってはどうでもいいことだった。
「自分が、情けなくて」
怪我を負った経緯のことを言っているのだろうとレノは解釈する。
「仕方ないさ。昨日はアレは不意討ちもいいとこだ。俺とルードの注意不足だったんだぞ、と」
だが、その言葉に対してまたもクラウドは首を横に振った。
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