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「折角僕が声を掛けてやったのに……。まぁいい、僕は大学の準備で忙しいんだ。今日は見逃してやる」
「忙しい中で、態々声を掛けるのか。阿呆か貴様」
「だ、黙れ! お前なんかダンジョンでくたばってろ!!」
口論で勝てないとみるや、エリトリアは典型的な捨て台詞を吐いて去って行った。
「随分と変な知り合いだなライラ」
「まぁな……」
「しかし、ダンジョンか。行ってみる価値はあるな」
食べかけだった林檎を全てかじり芯のみにすると、ベンチの脇に置かれた網状のゴミ箱に捨てる。
そしてアランはどっこらとジジ臭い掛け声と共に立ち上がり、ベルトに挿していた杖を手にした。
「近場に“コルラト”と言うダンジョンがあっただろ。其処なら、いくらか高額なモンスターがいるはずだ」
「成る程な。でもダンジョンって、モンスターの巣窟になってる所だろ? 木刀と杖で大丈夫か?」
「奥に行かなければ大丈夫だろう。入口付近では弱いモンスターが多い。それにあのダンジョンはさほど強いモンスターはいないらしいからな、初心者向きだ」
そうと決まればと、2人は外に繋がる門へと向かった。商店街を離れ、住宅街を通り過ぎた先に重々しく構える鉄の門。町の外へ出る唯一の扉。
「……よく考えたら、俺達外初めてじゃね?」
「よく考えなくてもそうだな」
モンスターが溢れる外に出れるのは、身を守れる技術を身に付けた者か、モンスターを避けて移動出来る者のみ。
普通の町人は卒業証書を貰い、その技術を身に付けている事を証明して初めて外に出れるのだ。
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