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白く塗られた煉瓦の壁が囲む、青草が茂る庭の端。其処で木刀を握りしめ、素振りをする少年が、1人。
「ほっ、ほっ」
声は低く、背丈は大人と引けを取らない高さを持っているが、まだ少し幼さが残る顔立ちをしている。
木刀を降る度に揺れる髪は炎の様に赤く、真っ直ぐ前を向く瞳は赤毛と対色の緑色だった。
「ライラ、おいライラ!」
少年から少し離れた建物の窓から、黒いローブを身に纏った黒髪の少年が顔を出す。背は赤毛の少年より低いが、顔立ちは黒髪の少年の方が大人びていた。
「ライラ! ライラ!!」
叫んでも一向に振り向かない事に切れた黒髪の少年は、右手に持っていた木を削って作られた簡素な杖を、赤毛の少年の方へ向ける。
そして、
「聞いているのか貴様ぁ!!」
空中で瞬時に造られた水の塊が、ライラと呼ばれた赤毛の少年へ放たれた。
「ぶべっ!?」
水の塊による攻撃を頭部にもろに喰らったライラは、間抜けな悲鳴を上げながら、水圧に耐えきれずその場で尻餅をつく。
「アラン! てめぇ何しやがる!!」
「五月蝿い! とっとと返事しなかった貴様が悪い!!」
アランと呼ばれた黒髪の少年は、額に青筋を浮かべながら窓から直接外へ出る。
「準備できたぞ」
そう言うと、アランは革で造られたナップザックをライラに見せた。
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