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「ったく、やっとかよ」
びしょ濡れになった赤髪をわしゃわしゃと掻きながら、ライラは呆れた表情で言った。
「うるさい、貴様が早すぎるんだ。木刀以外に持つ物は無いのか?」
「あとは簡単な生活品ありゃいいだろ。俺としては荷物に本なんか入れてるお前の思考のがわかんねぇよ」
木刀を腰のベルトに括り付けた鞘に収め、ライラは足元に置いてあった麻布で作られたリュックを背負う。
「……。この寮とも今日でさよならか」
くるりと横を向くと、白い煉瓦で積み建てられた寮が視界に入る。何十人も暮らすには狭く、決して快適とは言えないが、昨日まで寝床としてきた場所。
「やっぱ、寂しいなぁ」
「仕方無いだろう。国の援助は高等学園まで。後は自力で生きなければならない」
「ったく。孤児はこういう所がきついから嫌いだぜ」
ライラとアランは孤児のため住む場所は無く、今まで国の援助の一つである寮で暮らしていた
しかし昨日、高等学園 ーー15歳から18歳までの教育機関ーー を卒業した事で援助の受けれる期間は終わり、結果寮を出て行かなければならないのだ。
「この歳まで、援助を受けれただけでも良しとしろ」
「ところで、お前これからどうすんだ? 大学行くのか?」
「いや、俺は行かない」
「はぁ!? 学年首席が何言ってんだよ!!」
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